※この記事では内容に広告・プロモーションを含みます
兵庫県立西宮病院で認知症患者の男性が転倒し重い障害を負ったことに対し、家族が兵庫県に2575万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で地裁は「転倒する恐れが高いことは予見できた」などとして、約532万円の支払いを命じました
この判決は看護・介護従事者にとって衝撃的なものです
事故の当事者の看護師のことを思うと心が痛む
ニュースでは情報が省略されて伝えていることが往々にしてあるので、部外者の私が軽々しく発言すべきではないとは思います
ただ、この判決は今回の件だけでなく看護や介護の将来に大きな影響を及ぼす可能性がある。目の前のことだけではなく、今後はどうしていくべきなのかを含めて議論を深めていく必要があると私は思う
西宮病院で起きた転倒事故の概要
男性は16年4月2日早朝に看護師付き添いでトイレを使用
男性が用を足している間に、別室患者から呼び出があり排便介助の対応をする
男性はその間にトイレを出て廊下を1人で歩き、転倒して外傷性くも膜下出血と頭蓋骨骨折のケガを負った。男性は2年後に、心不全で亡くなられる
神戸地裁は判決で認知症の男性から目を離せば、勝手にトイレを出て転倒する可能性が高いことが「十分に予見できた」と認定した。また、男性の状態と、別室患者がオムツに排便すれば問題がなかった状況などを比べ「優先しなければならなかったと認められない」と指摘。男性は事故で寝たきりとなり、認知症が進んで両手足の機能全廃に至ったと認めた
詳細はコチラをご覧ください
認知症JR列車事故
西宮病院の判決は認知症患者をみる側の責任が非常に重いことがわかる判決ですが、過去にもみる側の責任が問われた事故がありました
私が西宮病院の記事を見たときに頭に浮かんだのが認知症JR列車事故です
事故は2007年12月に発生
91歳で要介護4の認知症の男性がJR東海道線の駅近くで線路に立ち入り、走行してきた列車にはねられ亡くなられました
この事故でJR東海は要介護1の男性の妻と遠方に住んでいる長男に対して振り替え輸送費など720万円の損害賠償を請求する訴訟を起こします
名古屋地裁の第一審の判決では、家族に対して請求全額の賠償を命じました
この判決に家族は「認知症の人を閉じ込めておくしかなくなる。介護に携われば携わるほど、被害が生じた場合に携わった人が責任を負わされることになる」と話されています
第二審の判決でも家族のうち長男への請求は棄却しましたが、妻の責任は第一審に続き認定し360万円の支払いを命じました
ただJR東海の上告で行われた最高裁では家族に賠償責任はなしとする逆転の判決が出ます
JR東海からすれば災難な結果になりましたが、個人的には家族が救われて良かったと思っています
そして西宮病院と状況は違えど、ここでも認知症高齢者に対する監督責任が問題になっている
認知症の方と24時間関わることの大変さがまだまだ周知されておらず、みる側の人に厳しい目が向けられていることがわかります
詳細はコチラをご覧ください
西宮病院の判決内容を見て私が思うこと
今回の判決内容をみて私が思ったことは色々とあります
まず介護や看護の理想とは逆をいくような判決で、ちゃんと有識者から意見を聞いたのかという疑問。「オムツに排便すれば良かった」とか簡単に言ってほしくはない
次に裁判長の「転倒する恐れがあることは予見できた」という言葉
確かに予見はできますよ
例えば私が担当しているフロアだと転倒が予見できる入居者さんが10数名いますね。そして、そういった方達が集団生活しているのが介護施設。優先順位にしても色々な経験をへてわかるもの
それこそ転倒事故などの経験を通して・・
咄嗟の判断でいつも正しい選択なんてできない。それにいつもは正解でも、たまにそれが不正解になることもある
私たちが相手にしているのは人間でありロボットではない
さらには今回の一件で訴訟のリスクから認知症患者の身体拘束や入院を拒否するケースも増えていく可能性があります。そもそも転倒事故で怪我をされた度に訴訟が起きたら、毎日どこかの施設が訴えられることになってしまう
また訴訟のリスクという観点から言えば、今後は入居者さんの尊厳やその人らしさよりも安全が最優先されるかもしれません
トイレに行くと転倒のリスクがあるからオムツにしましょう
お一人で移動するのは危険だから、必ずスタッフ付き添いで行動しましょう。車椅子なら尚良し
食上げして万が一詰まらせたら危険だから、このままにしましょう。ただし食下げは迅速に
リハビリして歩けるようになったら転倒のリスクが増えるから程々にしましょう
居室で過ごされると行動が読めないから、極力ダイニングにいてもらいましょう
転倒のリスクがある方はセンサーマットを使用しましょう
大袈裟ではありますが、これに近い方針になる可能性はあります
まるで刑務所のような介護施設や病院
そこで働くスタッフも常に訴訟のリスクに怯えながら入居者さんと関わることになる
介護という仕事が責任や労働環境に対して賃金が全く割に合わず、その醍醐味すら失おうとしています
色々と言いましたが、このような判決が前例になってはいけないと私は思います
最後に
訴訟を起こしたご家族に私は当初、懐疑的でした
大切な自分の家族が大怪我をされたのですから訴えたくもなるとは思う
だけど絶対に転倒させないなんて無理です
ただ今回ご家族が訴えたのは個人ではなく県に対してでした。どのような思いで提訴されたのかはわかりませんが、職場環境の改善に対する提訴だと考えたらご家族への視え方も変わってきます
どうしても「転倒の恐れを予見できた」とか「オムツに排泄すれば良かった」というパワーワードに目がいってしまうけど、私自身も含めて冷静になる必要がありそう
話は変わりますが
2020年時点で認知症の人の数は約600万人と推測され、2025年には700万人になると予測されています
それなのに人員配置基準は3:1から4:1にしようとする矛盾
おかしくね❗️
今後は入居前に転倒に関する説明をよりしっかりと行い、承諾書などにサインしてもらうことは必須になりそう
私の施設では説明はするけど、承諾書はなかったような・・
あとは定期的にご家族にご様子の報告
今回の件に関わらず事故防止や再発防止により力を入れていくことが必要なのかもしれません
益田市医師会に賠償命令が出た件もそうですが、認知症の方に携わる人たちの環境がどんどん厳しくなっているような気がします
このような状況で介護や看護業界で働きたいと思う人はどんどん減ってしまう
将来、あなたやその家族が認知症になるかもしれません
将来、あなたやその家族が介護施設に入所するかもしれません
でも、その時にみてくれる人がいなかったら!?
2030年以降、それが現実になろうとしています
今回の西宮病院の一件はそれほど重い判決だと私は思う
上記の本は認知症についてをイラスト付きでわかりやすく解説してくれています
看護や介護従事者でない方にこそ読んでほしい
認知症に対する理解がもっと深まることを願って
最後まで読んでいただき、ありがとうございました
宣伝コーナー |
※介護系の資格取得ならユーキャンがオススメ٩( ᐛ )و
ユーキャンのテキストは図解やイラストが豊富で初心者の視点でわかりやすく解説されていて、効率的に勉強を進めることができます
項目ごとに実践課題もあったりして、その都度自分の理解度を知ることも可能
また添削を提出すると講師からのコメント付きで返ってきたり質問をすることもできます
そういったサポートがあるのもユーキャンの魅力✨
ユーキャンについての記事はコチラから
コメント