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益田市立介護老人保健施設くにさき苑に入所されていた女性入居者が転倒し、その後に容態が急変しお亡くなりになられる事故(事件)がありました
お亡くなりになられた方のご冥福を心よりお祈り申し上げます
今回の出来事は介護の仕事に従事したことがない方からすれば、施設側の怠慢に思えるかもしれません
ただ、ずっと介護の仕事をしてきた私には決して他人事とは思えませんし、いつ私のいる施設で同じようなことが起きてもおかしくありません
というより、どの介護施設でも起こりうることだと思います
事故の概要
転倒事故は2018年11月25日未明に発生しました
女性入居者が居室のベッドから降りて転倒し、頭部を打撲
施設内で診察した医師は意識レベルの低下がないことなどから経過観察としたが、容態が急変し同26日に急性硬膜下血腫でお亡くなりになられました
松江地裁は医師がCT検査を行わないまま施設での経過観察をしたことが注意義務違反と認め、益田市医師会に対して2200万円の支払いを命じます
また女性入居者のベッド脇にあったセンサー付きマットの電源が切れていたため、ベッドから降りたことに施設職員が気づかず転倒につながったと原告側が主張した施設側の安全配慮義務違反は認められませんでした
判決を受け原告代理人の弁護士は「センサーマットに関する過失を認めなかった点は代理人として不満」とし、対応を検討するとコメントしております
益田市医師会に賠償命令が出た件について私が思うこと
今回の件で私が思うことは
・頭部を打った時のCT検査の有無 ・センサーの電源の入れ忘れ |
この2つです
冒頭にも言いましたが介護に従事したことがない人からすれば「頭を打っているのに検査もろくにしなかったのか」「センサーの電源の入れ忘れなんてありえない」と思う方が多いのではないでしょうか
ただ介護に従事する者としては、どちらもありうることだと思います
頭部を打った時のCT検査の有無について
新聞の記事からでは転倒事故後のご家族とのやり取りについての記載はないので詳細はわからないのですが、そこでの話の進め方によっても印象はだいぶ変わってくると思います
- ご家族にCT検査の提案はしたのか
- 頭部を打ったことによる今後のリスクについて説明したのか
- その上でご家族の意向を確認したのか
仮に医師もしくは看護師が「診断して症状がないので経過観察します」とだけ伝えていたのだとしたらご家族からすれば「医師がそういうなら」となりやすいし、「心配なので検査してください」と言えるご家族は少ないのではないでしょうか
特に今はコロナ感染の心配もあり病院に行くというのもリスクがありますし
また私の施設だと受診された方は5日間お部屋で隔離対応になりますし同じような対応をされている介護施設も多くあると思うので、その辺も加味していく必要がある
センサーマットを使用されていたということは多少なり認知症状があったのではと推察しますが、隔離対応による認知症状の悪化も懸念されます
コロナ感染前だと「とりあえず病院に行こう」という選択が今はためらわれる状況にあります
実際にその施設がどういう状況だったかはわかりません。
それに最優先すべきは入居者さんの命です。
ところで私が以前にいた有料老人ホームでは入居者さんが頭部を打った場合、もしくは頭部を打った可能性がある場合でも必ず病院でCT検査をするようにしていました。仮にご家族に断られたとしても繰り返しお願いして病院受診をさせてもらっていました
急性硬膜下血腫などで入居者さんの容態が急変するリスクがあるのはもちろんですが、万が一の時の訴訟に備えての意味合いもあったと思います
私が以前に紹介した著書『介護に必要な医療と薬の全知識』では
訴訟を恐れて頭部打撲は全例CT検査と決めている施設がありますが、医師の指示で行う検査と記載がありました
詳しくはコチラから
ただ今回の件を鑑みると、頭部打撲は全例CT検査にしたほうがいいのではと思う
ご高齢の方だと何が起きるかわかりませんから、最悪のケースを想定して行動すべきなのかもしれません
センサーの電源の入れ忘れ
センサーマットは便利なようで実はデメリットが非常に多いということを改めて痛感しました
- 入居者さんがセンサーを避けて転倒
- 入居者さんのストレス要因
- 転倒事故の対策がセンサー頼みになる
- そこから始まるセンサー地獄
- センサーを外すタイミングが難しい
そしてセンサーの電源の入れ忘れです
センサーについても過去に記事を書いているので、よかったらご覧ください
今回の件ではセンサーの電源の入れ忘れによって転倒事故が起きて施設側の安全配慮義務違反が問われました
まず始めに言っておきたいことはセンサーを導入しても事故を100%防ぐことはできません
複数の方にセンサーを導入していたら尚のこと難しくなります
誰かのお手伝いをしているときにセンサーが鳴って居室に行くのが遅れるなんてことは、介護士をしていれば誰もが経験したことがあるのではないでしょうか
そんな時はいつも祈るように居室の扉をあけます・・
センサーを導入する時はこの点を必ずご家族に説明した上で導入していました
そんなセンサーの電源の入れ忘れですが、私が今までいた施設でも何度も起きています。幸いそれが起因しての事故はなくヒヤリハットで済んでいますが、たまたまの偶然にすぎません
私自身、過去に2回センサーの電源を入れ忘れたことがあります
ちなみに過去の電源入れ忘れの対応策ですが
対象の入居者さんの対応したスタッフが退室時にセンサーを鳴らして、別のスタッフがそのコールをとる。その際にセンサーを鳴らしたスタッフが「センサーをセットしました」と報告するWチェックにしました
ただこれでも電源を入れ忘れて、センサーコールを受ける側のスタッフもコールが来ないことに気づかないなんてこともありました
結局は業務に追われているとWチェックにしても忘れることがある
他にもセンサーの電源は切らないという極端な対策をしている施設もありましたが、当然お手伝い中はずっとセンサーコールが鳴りっぱなしになるし、その間は他のコールがなってもわかりません
電源忘れ防止の良策があったら、ぜひ教えて欲しい❗️
センサーを導入しても100%事故を防げない、センサーが増えるとスタッフの負担も増加、電源を入れ忘れると万が一の時に訴訟のリスクがある
これらを考えるとセンサーの導入はリスクしかないように思えます
実際に身体拘束の観点から導入を禁止にしている施設もありますから
センサーを導入するのは転倒防止ではなく、その方の行動パターンを把握するときのみに限ったほうが良さそうです
人間だから電源を入れ忘れることは誰にだって起こりうる
ただ私が家族の立場だったら電源の入れ忘れで親が転倒事故にあえば「どういう対応をしてるんだ」と施設に確認すると思うし、ましてやそれが原因で亡くなったら施設を訴えるのも当然だと思います
最後に
介護の仕事は大変だけど、やり甲斐のある仕事です
ただ今回改めて感じたことは
介護は家族にとって大切な方の命を預かる仕事だということ
同じような事故が起きないことを心から願っています
最後まで読んでいただき、ありがとうございました
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