介護に役立つ本の紹介7〜ロスト・ケア〜

介護に役立つ本
ピョン太
ピョン太

※この記事では内容に広告・プロモーションを含みます

介護に関する本の紹介企画の第7弾

今回紹介するのは

葉真中顕さんが著者の『ロスト・ケア』

『ロスト・ケア』はミステリー小説で、今まで紹介してきた介護現場などで役立つ知識が身に付くといった類ではありません

日本の介護の実態などがとてもリアルで生々しく、そこにミステリー要素が加わっていて読み応えがあります

高齢社会の日本だからこそ、フィクションだけどノンフィクションのような

現実で起こっても不思議じゃない

そう思わせる内容になっています

ロスト・ケアは第16回日本ミステリー文学大賞新人賞を受賞していて、2023年3月24日に松山ケンイチと長澤まさみの共演での実写映画化されます

今回はそんな『ロスト・ケア』の本の特徴や構成、あらすじを紹介します

かいご畑

『ロスト・ケア』の特徴

著書は2013年2月20日に刊行

出版は光文社で定価1500円+税

全304ページ

構成は

序章

第一章 天国と地獄

第二章 軋む音

第三章 ロスト

第四章 ロングパス

第五章 黄金律

終章

あらすじ

〜ストーリーは地方裁判所の法廷から始まります〜

そのときは証言台に立ち、真っ直ぐに正面の裁判長を見つめていた

その裁判長は主文を述べず、判決理由を先に述べ始めた

通常、先に読み上げられる主文を後回しにするのは、死刑判決が出るときとされている

はのべ43人もの人間を殺害し、そのうち十分に裏が取れた32件の殺人と1件の傷害致死の容疑で起訴された

起訴事実は全て認めたので、責任能力ありなら死刑以外の判決は考えられない裁判だった

後悔はない。全て予定通りだ。

は微笑みを浮かべた

同日・・・

被害者遺族である洋子は傍聴席からの姿を見上げていた

洋子の母はに殺された

しかし、犯行が発覚してから今日まで、ついに洋子の胸にはに対する怒りも憎しみも湧くことはなかった

洋子は他の被害者遺族にたちに聞いて回りたい衝動に駆られた

ねえ、あなたたちはに救われたと思ったことはない?

同日・・・

斯波宗典は長い判決を聞きながら思考を巡らせていた

医者に自然死と判断された父は、実は殺されていた

だが、救われた

死によって父も、そして斯波も、確かに救われたのだ

斯波にはこの殺人が絶対的な悪とは思えない。しかし、裁きは必要だとも思う。父を殺したことに対する応報ではなく、一つの契機として

やまちん
やまちん

かくしてストーリーはそれぞれの過去の舞台へ

とある男性は検事で父親を有料老人ホームに入居させる

とある男性はその有料老人ホームの営業部長

とある男性は訪問入浴の従業員

そして

洋子は自宅で認知症の母親の面倒を見ていた。最初は母の介護にある種の充実感を覚えていたが、少しづつほころび始める

やまちん
やまちん

ここから読み続けるのが辛くなるような描写が続き・・

洋子は認めた

つらい、つらい、つらい

母の介護が辛い。1日も早く、この地獄から抜け出したい、と

人が死なないなんて、こんな絶望的なことはない

そんなふうに考えてしまう自分が心底嫌になった

そんななかにより母が殺されてしまう

しかし医師の検案では心不全による自然死と判断される

洋子はそのとき思った

母さんが死んだ、地獄が終わった

半ば無意識のうちに顔面の筋肉がほころび笑顔を作り出していく

ああ、これでもう、母さんの世話をしなくていいんだね

もう、母さんになじられることもないんだね

もう、母さんをベッドに縛り付けなくてもいいんだね

もう、母さんのお尻を拭かなくていいんだね

これで、もう

もう、拭いてあげられないんだね

不意に湧き上がるその感情に、胸が詰まった

やまちん
やまちん

かくしてストーリーはそれぞれの日常にスポットを

当てながら、進んでいきます

印象に残ったフレーズ

親の介護のつらさを誰にも言えずに耐えてる娘。姑の介護を家族から押し付けられ、自分でも義務だと思い込もうとして、結果的に虐待に走る嫁。理想を抱いていた真面目なヘルパーは、仕事中に暴言を吐いた翌日から、無断欠勤して辞めてしまった。メディアが垂れ流す想像力を欠いた良識は、彼女たちのような人々をもっと追い詰める

ビジネスであれば、合理化は当然だ。不採算部門は凍結したり廃止したりする。しかしその一方で介護は福祉でもある。儲からないという理由で一度始めた事業を辞めてしまえば、その利用者、特に介護に頼って生きている者は、生存権が脅かされる。「介護難民」は絵空事の威し文句ではない

残念ながら、介護保険は人助けのための制度じゃない。介護保険によって人は2種類に分けられた、助かる者と助からない者だ。介護保険によって介護はビジネス、資本の論理の上に乗せられた。それはつまり、助かるために金が必要になったってことだ。(中略)結局、充実した介護を受けるためには、介護保険の範囲を超えて、利用者が実費を負担しなきゃならない。実際にほとんどの有料老人ホームでは、実費負担でのサービスを行っている。その方がきめ細かく、内容の良い介護ができるんだ。制度に左右されない分、経営も安定する

介護の現場には人と人との温かい交歓や、感動的な経験もあるが、それ以上に、暴言や暴挙、セクハラや暴力といった禍(わざわい)もある。そしてその源たる要介護老人は、まぎれもない弱者なのだ。守らなければならない、思いやらなければならない、優しく接しなくてはならない、弱者。心の中ではうんざりしていても、顔面の筋肉を動かして笑顔の形を作らなければならない。真面目な心ほど蝕まれて燃え尽きる

かいご畑

ロスト・ケアを読んだ感想

僕が『ロスト・ケア』を読むのは今回が2回目で、初めて読んだのは刊行された年になるので今から10年前

当時はただただ「面白い」とストーリーを楽しみながら読んでいたのですが、改めて読んでみるとこの本のスゴさがわかりました

それはこの本一冊に介護における多くの問題や課題が凝縮されているということ

介護保険制度の問題に鋭く切り込み、制度を悪用した不正や介護事業からの撤退

在宅介護における孤立

給料は安く、拘束時間は長く、労働はきついという介護現場の実態

真面目な介護士ほど、つまずいて辞める

さらには高齢者をターゲットにした振り込め詐欺

これだけの介護の問題をストーリーに違和感なく散りばめられているのが、この本のスゴさであり魅力なのだと思います

それら全ては小説用に誇張されたものではなく、実在する介護の負の部分

介護保険制度の不正であれば僕は真っ先にコムスンを頭に思い浮かべるのですが、そういう企業は本当にある

在宅介護における孤立においても、「親の面倒を子が見るのは当然」という風潮がある日本において、施設に預けることに罪悪感を持つ人は少なくありません。そして仕事を辞めてしまったり、身も心もボロボロになってしまう方を今まで何人も見てきました

洋子の「救われた」という一見すると人間性を疑うようなセリフでも、介護の仕事に従事している者としては、その気持ちは痛いほどよくわかる

介護施設にご両親を預けるということは、決して恥ずかしいことでも、後ろめたいことでもない、ということを付け加えておきたい

『ロスト・ケア』はフィクションだけど、ノンフィクション。僕はそう感じました

最後に

『ロスト・ケア』を読めば日本の介護の問題点がよくわかるのですが、欲をいえば介護の楽しい部分ややり甲斐にもフォーカスしてほしかったなと思う

最初から最後まで鬱展開なので読む際は注意が必要かも・・

ただ

めっちゃ面白い!!

最後まで読んでいただき、ありがとうございました

よかったら他の記事も読んでくれたら嬉しいです😄

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